「われわれはプラットフォーム」 ウーバー責任者が主張 都労委 会員記事 編集委員・沢路毅彦2021年12月7日 6時00分

飲食宅配代行「ウーバーイーツ」の配達員が労働組合を作って団体交渉を求める権利はあるのか――。

ウーバーイーツユニオン」が東京都労働委員会(都労委)に申し立てた紛争が山場を迎えている。

6日にあった都労委の審問ではウーバー側の責任者が初めて証言に立った。「われわれはプラットフォームに過ぎない」と繰り返し、団体交渉に応じる義務があるというユニオンの主張に反論した。

 

この日証言したのは、ウーバーイーツジャパンで配達員のオペレーションを統括している責任者。尋問は通訳を介して英語で行われた。

 

尋問冒頭で「ウーバーイーツは運送事業者か」とウーバー側の代理人から問われた責任者は、「私たちはプラットフォームサービス(の事業者)だ。

ユーザーである飲食店、配達員、注文者の間のマッチングをしている」と否定した。

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ウーバーイーツ配達用のバッグは配達員らの間で通称「ウバッグ」と呼ばれる=藤えりか撮影

 

ウーバーイーツは、顧客が飲食店に食事を注文すると配達されるサービス。

ただし、配達員は特定の飲食店の従業員ではなく、個人事業主で、自転車やバイクなどを使って配達する。

飲食店への注文、配達員への依頼など一連の作業がスマートフォンのアプリで進む。アプリはウーバーが開発したものだ。

 

日本での事業は2016年9月、東京都渋谷区と港区で始まった。

今では47都道府県に広がり、加盟している飲食店は13万店超。

稼働している配達員は約10万人いる。

 

団交に応じないウーバー

この配達員らが2019年10月、ウーバーイーツユニオンを結成。

①事故があった場合の補償

②アプリのアカウント停止

③配送報酬のあり方などについての団体交渉を求めたが、ウーバー側は応じなかった。

そこで、2020年3月、ウーバーが不当に団交を拒否していると都労委に申し立てた。

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東京都労働委員会の審問の様子。左がウーバー側、右がユニオン側=東京都新宿区

 

配達員の登録方法やサービス全体の流れについてはほとんど争いがない。

配達員になることを希望する人は、募集ページで氏名やメールアドレス、電話番号、写真などのデータを入力し、アプリをダウンロードする。

希望者が最寄りの「パートナーセンター」でウーバー側のスタッフの確認を受けると、アプリが使えるようになる。

 

配達員が仕事をするときは、好きな場所でアプリをオンにする。

すると、「リクエスト」と呼ばれる飲食店からの配達依頼が届くようになる。

アプリ上に飲食店と配達員の位置が示され、配達依頼を承諾した場合には飲食店に向かって食事を受け取る。

 

配達員が注文者に食事を渡し、完了したと報告すると、アプリに配送料が表示される。

報酬は日曜日締めで、翌週の月曜日に支払われる。

注文者は、食事の代金や配達料をクレジットカードを使ってウーバー側を通じて支払うため、配達員は原則としてお金を受け取ることはない。

 

争点は「労組法上の労働者」

 

問題は、こうした仕組みの評価だ。

法律上の争点は配達員が「労働組合法(労組法)上の労働者」かどうか。

労組法上の労働者であれば、団体交渉権が認められるからだ。

 

ユニオン側は、過去の最高裁判決に従えば、配達員が労組法上の労働者である条件を満たしているという。

ウーバーは運送業であり、アプリを使って配達員に仕事を割り当て、配達料をいくらにするかも一方的に決めていると主張。

配達員が受け取る報酬も配達業務の対価だと訴える。

 

一方、ウーバー側は、自分たちは運送業ではなくプラットフォームに過ぎないという。

運送契約を結んでいるのは飲食店と配達員で、配達料はウーバーが「推奨」しているものだという。

責任者は「配達依頼は多く、毎回配送料を交渉するのは難しい。

簡単に利用できるように料金を示している」と説明した。

 

特に主張が食い違っているのが、配達依頼の扱いだ。

 

ユニオン側によると、配達依頼を断ればその後の依頼がこなくなり、アプリを強制的にログアウトされることもあるという。

配達員はこうした状況を「干される」と表現している。

11月22日にあった審問で配達員の1人は「『干される』ことは今ここでアプリを使えばすぐに証明できる」と証言した。

 

ウーバー側は「配達依頼を承諾するかどうかは配達員の自由だ」と繰り返している。

一定の時間内に連続して3回配達依頼に応じないとアプリが自動的にログアウトするよう設定していることは認めたが、そうした設定は素早くマッチングするために欠かせないという。

 

飲食店や注文者の評価が低い配達員のアカウントを停止することについても見解が対立している。

ウーバー側は「プラットフォームの信頼性、安全性を確保するためだ」と正当性を主張した。

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東京都労働委員会は東京都庁第1本庁舎(中央)の37~38階にある=東京都新宿区

審問は今月の9日と27日にも予定されている。

都労委の結論は来年のゴールデンウィークごろには出るとみられている。(編集委員・沢路毅彦)

 

<労働委員会>主に労働組合と会社との間の紛争を解決するためにもうけられている機関。

47都道府県ごとにあり、国の機関としては中央労働委員会がある。

いずれも公益を代表する委員、労働者を代表する委員、使用者を代表する委員の三者で構成。

会社の対応に問題があると判断した場合には救済命令を出す。

労働組合が法律が求める条件を満たしているかどうかの資格審査もする。

 

労働組合法(労組法)上の労働者 労働組合法は、対象となる労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者」と定めている。

労働時間や賃金を規制している労働基準法よりも対象が広い。

過去の最高裁判決によると、労組法の対象になるかどうかは①事業に不可欠な労働力として組み込まれているか②労働条件を一方的、定型的に決められているか③労働の対価として報酬を受け取っているか、といった要素で判断されている。

個人事業主であっても、労組法上の労働者であれば労働組合を作って団体交渉を求めることができる。

日本プロ野球選手会の例が有名だ。

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